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現場に立ち続けないと勘が鈍るよね

by orie1166

 何かインプットをしたい、そう思うと自然と足が向く本屋がある。その本屋は明治初年に創業されて約150年という長い歴史を持つわけなんだけれども2年間閉じ、そして昨年末に喫茶スペースを備えて再オープンした。今日も何か偶然の出会いを求めてお邪魔した。

 何気なく、いつもはあまり立ち止まらない「食」にまつわるコーナーから入ってみた。すると目についたのが、アイスが溶け切ったクリームソーダみたいな色の背表紙をした『京都・六曜社三代記 喫茶の一族』(京阪神エルマガジン社)。カバーの触り心地が良く、表紙のイラストも中の挿絵もなんとも味があって(北林研二さんという方の絵なんですね)、帯の「持続可能な店の在り方とは?」なんて文言にも誘われて、ついでに言うと「なんか老舗で人気だから行ってみよう」とミーハーに何度か入店したことがある六曜社の本だったので、その日手に取った1冊目をそのままレジに運ぶこととなりました。

 前述の通り、朝陽館は喫茶スペースを備えているので、パソコンの入ったカバンを脇に置き、そのまま本を読み始め、家に帰って家族が寝静まった後もそのまま読み続け、ついには読み切りその余韻でこれを書いている。

 

 話としては、1950年、旧満州で出会った男女が現在の河原町通り三条下ルで営業を初めて、家族経営のなかで現在の三代目(初代のお孫さん)に経営が移ってゆくまでを書いたものなんだけれど、1冊を通じて気づきたくなかったけれど気づいたこと、つまり気づいてしまったけれど私には答えがでないことがある。それは、「現場に立ち続けている」ということ。初代の奥さんは90歳を超えても週に1~2度は店に立っていたと。いやはや、それは超人...と思いつつ、店に立たないとどんどん感覚が薄れてゆくというのは絶対的にあると思う。

 ちょっと自分の話をする。言い訳がましい話になるのだけれど、2010年に1166バックパカーズを初めてから2015年いっぱいくらいまでは基本的には毎日現場に立っていた(古参のゲストの方々はよくご存知だろうけれど、結婚前は札幌往復をしながら店を開けていたころもあるので、毎日というとちょっと違うかもしれないが、まぁその辺りは誤差くらいで)。2016年の年始に妊娠がわかってからも出産ギリギリまでは毎日出勤していた。ところが産んでしまうと子供につきっきりになる。通常の仕事であれば、子供が保育園に行き出すといい具合に仕事に復帰できるものだけれど、宿の仕事と子育ては時間的に100%バッティングするので、家庭に皺寄せをしない限り現場には立てない。いろんな考え方があると思うが、今のところ、自分としては皺寄せせずに家庭も宿も成り立てば...と思っている。

 とはいえ、前述した通り、店に立たないとどんどん感覚が薄れてゆくというのは絶対的にある。もともと一人で切り盛りしていたときは、朝出勤しても自分のなかで流れがあった。玄関の鍵を開け、電気をつけてカーテンを開ける。トイレ前やキッチンの手ぬぐいや台拭きを回収し、電気ケトルをオンにし、ついでにコーヒー豆とグラインダーを持って洗面所へ(豆を挽く際の音が、ラウンジだと上階のゲストに響くので、1166バックパカーズでは洗面所で豆を挽くのが習わし)。洗濯機に手ぬぐいを放り込み洗面所のカーテンを開けて豆を挽く。引いた豆を持ってキッチンに戻るころには湯が沸いている。何も考えずとも、最短コースを無駄なく通り、軽やかに(多分ね...)テキパキと、楽しく動いていた。しかしながら、今ひさびさに朝のシフトに入ったとしたらどうだろう。まず玄関のカギを開けることにもたつくかもしれない。カーテンを開けるために窓際に登らないといけないんだけれども、足が上がらないかもしれない。コーヒーのフィルターを探すの右往左往するかもしれないし、洗面所に行っても「ケトルのスイッチ入れてなかった」なんてことになりそうだ。ゲストとの会話だってそうだ。高速バスの乗り場は変わっているかもしれない。空でいえた戸隠行きのバスの始発の時間も出て来ない。置くべきシーツのセットも間違いそうだし、なんだったら埃を残したままで掃除終了と言ってしまうかもしれない。だからやっぱり、現場に立ち続ける方がいいのだ。「とはいえ家庭の時間とバッティングするのだ...」と悩みは元に戻ってゆく。

 では、現場に立たずに日々何をしているかと言うと、意外に貧乏暇なしである。直近で行なっているのは雇用調整助成金のためにハローワークに提出する資料作成。WEBサイトの更新、イベントの企画、オンラインストアの発想業務、県民割のために提出した書類に不備があって突き返されたのも再提出しなければならない。地図も作っている途中だし、入稿が迫っているインタビュー記事の仕上げもある(ここで忙しそうに業務を羅列することで、ほらほら、結構仕事しているんだ...と自分を安心させているわけだ。つまり、現場に立てない理由があるということを言って逃げようとしているのかもしれない)。

 世の中の子育て中の女性が宿の現場に夜も朝も立っている姿をみることがあれば、ぜひ「よくやってるなぁ!」という目で見て欲しい...(と私は勝手に思っています)。

 

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